「子どもが宿題をやってこなくて、学力の差が広がっている。できる子とできない子の二極化が加速する」
「学校現場では、同じように授業をしても、伸びる子と伸びない子が出てきてしまいますよね」
学力の2極化はどんどん進むと、20年教師を経験して感じました。
学校で学習したことを補うための家庭学習が大事ですが、
宿題が不登校や無気力の原因になってしまうことも。
宿題の量も、塩梅が難しいですよね。
保護者から「多い・少ない」と要望を受けることもあります。
私は宿題は少ないほうが良いと思っています。
教師の多忙化にもつながるからです。
丸つけやコメントは、授業や子どもたちへ対応する時間を奪うことがあります。
そこで、子どもたちが積極的に取り組んだ2つの宿題を紹介します。
教師の負担も軽くなった現場で使えるアイデアです。
宿題はなんのために取り組むのか。
宿題には大きく2つの意味があると思っています。
【1つ目は、学習の定着を図ること】
エビングハウスの忘却曲線では、人は20分経過すると、内容の40%を忘れてしまうと言われます。
1時間目の算数で得た新しい知識は、2時間目の体育の最中にはほぼ0になる。
知識を定着させて、何度も使用できる知恵に変えていくためには、反復して取り組むことが必要です。
その反復法の1つが家庭で取り組む宿題です。
しかし、この目的に限定してしまうと、
・漢字やドリル、各教科の問題集の連発
・子どもが整理できないほどのプリント
があふれてしまい、学力の低い子どもほど宿題から離れていきます。(本来は学力の低い子に取り組んでほしい宿題のはずなのに…)
そこで、2つ目の目的です。
【家での行動を、アウトプットとして活用する】
これは、前向きな学びです。やらされる学びではなくて、自分から取りにいく学び。
学校の授業では、クリエイティブなことに取り組む機会が確保されているはずです。
授業で漢字をひたすら書いたり、筆算ばかりするのでは今の子もどたちは素直に不満を爆発させると思います。
ICT機器を駆使して、学び合う内容が多いでしょう。
家庭学習でも、クリエイティブなことはできないか。そう考えて取り組んだが、
「わくわくノート」「わくわく音読」の2つです。
わくわくノート
ワクワクノートは、「自分がワクワクすること」に取り組んで、そこから得たことや気づいたことを「言語化する」ノートです。
せっかくだから楽しく取り組んでもらいましょう。
・野球が好きな子だったら、素振りをしてうまくなったこと、次に取り組んでみたいこと
・ずっと気になっていたけれど、調べてみたいこと
・みんなに伝えたいこと
・描いてみたいイラスト
とにかく自分が夢中になって取り組めることを、形として残す。
自分の言葉で腑に落ちるように、文章にする。
このわくわくノートに、「わくわくポイント」をプラスしました。
内容に応じて、教師がポイントをプレゼント。そして、ポイントを使える制度を取り入れました。
・10ポイント…給食で残ったものが優先的にもらえる(他にもほしい子がいたら、オークション)
・30ポイント…次の席替えで自分お好きな場所に行ける
・友情コンボ…友達3人と30ポイントずつ出し合えば、宿題なし。
・50ポイントずつ出すと、先生のおすすめの映画が見られる
こんなイメージで提案すると、前向きにノート制作に取り組みます。
上手にできているノートは、子どもたちにシェア。
アイデアはどんどん出てきます。ほめて伸ばす機会もできます。
<表れた効果>
・普段なら雑に宿題を済ませてしまう子が、ワクワクノートは丁寧に取り組むようになった。そこから宿題の取り組み方も丁寧になっていった。
・全く宿題を出さない子が、ポイントを貰えるのが嬉しくて、得意の絵を披露してくれた。
・猫を飼って猫好きな子が、猫についてますます調べた。テーマは家の猫の行動から取り上げ、観察力がついた。
・本を読む子が増えた。本の紹介を1ページにまとめて、友達にシェアをすることができた。おかげでクラスの読書熱が高まった。
そして、時々内容の評価を子どもたちにやってもらいました。
これは前もって「◯日は◯◯さんにチェックしてもらうよ」と告げておきます。
そうすると、◯◯さんの好みに合わせてワクワクノートを仕上げてくるんです。
ゲーム好きな評価者だったら、その子の好きそうなゲームの情報を、絵を描くのが好きな子のときにはイラストを描いてきたりなど、教室内に先生を増やしていきます。
すると、教師の負担が減るんです。子どもたちは先生気分でうれしそうに採点してくれます。
わくわく音読
音読は毎日宿題として出しました。
音読が苦手な子は多かったのですが、その効果が大きくてたくさんの子が一生懸命取り組んでくれました。
というのも、子どもが楽しくなる取り組み方を提案したからです。
その方法は、「iPadに録音する」
子どもたちは、iPadなどのICT機器が大好きです。教えればすぐに使いこなせますし、どんどん新しいやり方を開拓します。
家庭では、iPadに録音して音読することを宿題にしました。
ここに気づきがあるんです。
音読しているときに自分で聞こえている声と、録音した声は違って聞こえます。
他の人に自分の音読の声はどんな感じで聞こえているのか?ということに気づけるんです。
読み方の癖や、聞きやすさ、改善点を見つけることができます。
人の音読を聞くより、自分の音読を聞くことで効果が上がります。
加えて、お家の人から感想をもらいました。
これも録音です。よく、音読カードを作り、自己評価を記入するとか、お家の人にひと言感想を書いてもらうとか…
あれって、けっこうめんどくさいんですよね。
とくにコメントなんて求められたら、ほんの一言書くのでも手間といえば手間。
録音でメッセージを貰うと、実はあっという間なんです。
家庭の雰囲気も伝わってきて、いいですよ。
それを、授業の最初に友達に聞いてもらうと、ちょっとした緊張感も加わって、場が和みます。
宿題→授業
個人→仲間
と繋げて利用することができるのでおすすめです。
家での音読は「ストーリー読み」
家で音読に取り組むときの目的は、話の内容を理解することです。
録音することで緊張感が生まれ、子どもたちは自然と”上手に”読もうとします。
「、」や「。」に気をつけてとか、
「気持ちを込めて」とか、言う必要がないんです。
目的は一つだけ。話の流れをつかむこと。大まかにストーリーを理解することです。
これが授業での予習になります。授業では、違う目的を持って音読をします。
授業ではテーマを持って
・目的読み
家庭での音読によって、ストーリーは把握できているので、
授業では学習課題に合わせて読むように声掛けをします。
「上手に読みましょう」
「間違えずに読みましょう」
とかはおいておきましょう。
「主人公の気持ちが変わった瞬間はどこ?」
「物語のクライマックスは、文章のどこから?」
「残雪と向き合う大造じいさんは、どこにいるか。今日はみんなに絵を描いてもらうよ」
その時に合わせた学習テーマを掲げて、音読に取り組ませます。
おすすめは、小声で、鉛筆を持って。
教科書は、いい意味で汚す。
書き込みがたくさんある教科書ほど、考えた証です。
中学年や高学年になったら、先生が音読カードをチェックする時間は短縮すべきだと思っています。タブレットや子どもたちに任せる。空いた時間で、子どもたちに考えさせたい学習課題を、どうやって子どもたちから引き出すか、その方法を考える時間に変わりますから。
他にも、教師ができる仕事時短術はこちらの記事から